日本でハイレゾという言葉が使われたのは2012年、今から9年前のこと10年ひと昔という言葉どおり、いよいよ2020年年末から2021年年頭にかけて、完全ワイヤレスイヤホンの新製品が多数発表された
2021年年頭では各社全力を投入し性能・音質面で各製品とも飛躍的発展が見受けられた
その意味では完全ワイヤレスイヤホン元年といえる
目次
完全ワイヤレスイヤホンを取り巻く環境
各メーカー完全ワイヤレス・フラッグシップモデル


JBL CLUB PRO+ TWS JabraElite 85t Noble audio FALCON PRO Sennheiser
MOMENTUM True Wireless 2Bose QuietComfort Earbuds
Apple AirPods Pro パナソニックEAH-AZ70W-K audio-technica
ATH-ANC300TW
Hiby WH3(中国)
【各社の完全ワイヤレス・フラッグシップモデル】
- 全部付の完全ワイヤレスイヤホンとは『ノイキャン』『外音取込』など主要機能を装備していて、左右のイヤホンがコードなしで独立しているもの(TWSと表記される場合もある)
- 音質面ではハイレゾを表記しているのはノーブルのFalcon Proの「Atpx Adaptive」の1機種のみ
- 音質面での評価は必ずしもハイレゾ対応かどうかだけでなく、音の広がり、音場など色々な要素の総合されたもの
- ソニーのWF-1000XM3は2019年モデルだが、いまだに総合評価1位に君臨している
- 2021年年頭においては「JBL CLUB PRO+ TWS」「Jabra Elite 85t 」「Noble audio FALCON PRO」の3機種が評価が高い
- それ以外のメーカーもそれぞれ、各製品ごとの特徴を訴求し、売れ行きもまずまずである
- フラッグシップモデルの価格帯は各メーカーとも3万円以上の製品となっている
- 中国のメーカーであるが音質面では有名なハイビー社の「Hiby WH3」というワイヤレスがアプデ後にUATとLDAC対応になる予定
- 個人的な評価順位は音質・ノイキャン・外音取込機能の総合で判断
- 第一位「ソニーWF-1000XM3」
- 第二位「JBL CLUB PRO+ TWS」
- 第三位「Noble audio FALCON PRO」
完全ワイヤレスステレオはケーブルなしで楽曲をステレオ再生することを意味する言葉です。これを意味する「True Wireless Stereo」という英語から「TWS」と呼ばれることもあります
価格帯別・完全ワイヤレスイヤホン分類
① 2万5千円以上・フラッグシップモデル(冒頭掲載写真)
- 上記写真掲載の各メーカーフラッグシップモデル、大手や名声の高いメーカーはほぼ網羅した。各社とも3万円以上の価格が多い
- 中堅・後発メーカーにおいてはフラッグシップモデルも2万円台で販売されている製品もある
- メーカーごとに各々強みを持っているex. Boseは「ノイキャン性能」、ゼンハイザーは音質など
- 2万円の「JBL CLUB PRO+ TWS」は音質もコスパも最高
- 同じく「Hiby WH3」は完全ワイヤレスイヤホン性能としては192kHZ/24bitのハイレゾ対応のUATコーデックを開発し、LDACにも対応予定
② 1万円以上・実用性能装備モデル
JabraElite 75t Noble audio FALCON 2 Bose SoundSport Free パナソニックRZ-S50W-K AVIOT TE-BD21j-pnk AVIOT TE-BD21j Anker Soundcore Liberty Air 2 Pro JBL LIVE FREE NC+ TWS
- 1万円台の実用性能装備モデルは今回8製品を取り上げました
- これ以外にも近いレベルは存在するが多数の評価が高い物に限定
- できるだけ、最新の製品を掲載、いずれも専門家の評価も高い
③ 1万円未満・高性能量販モデル
SOUNDPEATS Sonic EarFun Air Pro MPOW M5 PLUS TaoTronics
SoundLiberty 94
- 高高ここで取り上げた4製品は、すべてコスパ高い
- 安価で高性能ということ、甲乙つけがたい
ハイレゾは完全ワイヤレスで再生できるか
出典:https://panasonic.jp/life/entertainment
- ハイレゾとは何かを明確にする
- Bluetoothのコーディックとは
- ハイレゾ再生可能な「完全ワイヤレスイヤホン」
1. ハイレゾとは何かを明確にする
① ハイレゾの定義
ハイレゾ音源とは「High Resolution Audio」の略で、Resolutionは「解像度」という意味。
これまでのCDやダウンロード音源(AAC・MP3)では表現しきれなかった音を余すことなく捉えた、きわめて高音質な音源データです。
一般的にはJEITAの定義である48kHz/24bit以上をハイレゾとする
JEITA(電子情報技術産業協会)の定義
「CDスペックを超えるデジタルオーディオであること」をハイレゾの定義としており、具体的には16bit /44.1~48kHzを超える音源データが対象となります
ただし、一方がCDスペックを超えていても、もう一方がCDスペック未満ですとハイレゾには該当しません
一般社団法人日本オーディオ協会の定義


【JEITA公告では「ハイレゾ」を以下のように具体的な事例を表示】
- 44.1kHz/16bit : CDスペック
- 48kHz /16bit : CDスペック
- 44.1kHz/24bit : ハイレゾ(量子化ビット数がCDスペックより高い)
- 48kHz /24bit : ハイレゾ(量子化ビット数がCDスペックより高い)
- 96kHz /16bit : ハイレゾ(サンプリング周波数がCDスペックより高い)
- 96kHz /24bit : ハイレゾ(CDスペックより両方高い)
- 96kHz /12bit : ハイレゾでない(量子化ビット数が低い)
- 32kHz /24bit : ハイレゾでない(サンプリング周波数が低い)
【アナログ信号に関わること】
- 録音マイクの高域周波数性能: 40kHz以上が可能であること。
- アンプ高域再生性能: 40kHz以上が可能であること。
- スピーカー・ヘッドホン高域再生性能: 40kHz以上が可能であること。
【デジタル信号に関わること】
- 録音フォーマット: FLAC or WAVファイル96kHz/24bitが可能であること
- 入出力I/F: 96kHz/24bitが可能であること。
- ファイル再生: FLAC/WAVファイル96kHz/24bitに対応可能であること。
(自己録再機は、FLACまたはWAVのどちらかのみで可とする) - 信号処理: 96kHz/24bitの信号処理性能が可能であること。
- デジタル・アナログ変換: 96kHz/24bitが可能であること。
② 人間の聴こえる範囲とハイレゾ領域


- ハイレゾには2つの軸がある。聞こえる音の高さの範囲を示す周波数
- 聞こえる音の大きさの範囲を示すダイナミックレンジ(略称Dレンジ)
- 音の高さの範囲を示す「周波数」と「Dレンジ」は、フォーマットのサンプリング周波数(約半分)と量子化ビット数(bit)で決まる
- これに関する人間の能力は図のオレンジの部分で、周波数20~20kHz、Dレンジ0~120dB
- 再生フォーマットは人間の能力範囲をカバーできれば十分であって、それ以上は無駄と考えられる
- 人間の範囲をカバーするフォーマットは、図から、48kHz /24bitもしくはDSD(2.8MHz/1bit)という風に読み取れる
- システムのDレンジはアンプの最大出力、スピーカーの最大入力、音楽ソースの最大値(109dB)の最小値をとる
- 目標値としては音楽ソースの最大値110dbとし、アンプの最大出力、スピーカーの最大入力を決める
- 音楽ソースのダイナミックレンジ(110dB)をカバーする音楽再生をするためには以下の要件が必要(この要件の達成には高性能なアンプとスピーカーが必要。
- 音源フォーマット:24bit 48kHzまたはDSD(2.8MHz)
- アンプ:S/N比108dB以上、実用最大出力100W
- スピーカー:能率96dB以上
- スピーカーの能率が高いほどアンプの出力が小さくて済む。例えば能率100dBなら40WでOK
- ヘッドホンは大抵の機器で120dBのDレンジを獲得できる。アンプのS/N比さえなんとかなれば、ハイレゾに最も近いデバイスになる
現行のCDの44.1kHz/16bitでは人間の聴こえる周波数20~20kHzはカバーしているが、ダイナミックレンジは96dbで120dbという人間の能力には不足
ハイレゾの48kHz/24bitもしくはDSD2.8mHz/1bit十分あれば人間の能力をカバーできる




2. Bluetoothのコーディックとは


① Bluetoothコーデックとは音声圧縮の方式
【コーデックにより遅延・圧縮効率・音質が異なる】
-
「遅延」は送信側と受信側のタイムラグを表し、動画を見る場合、遅延が少ないほど映像と音声のズレが少なく自然に鑑賞できます
-
「圧縮効率」は音声データをどれだけ効率的に圧縮できるかを表し、圧縮効率が高いほどデータ量を減らせます
- 「音質」はaptX LLやaptX adaptiveなど、高音質・低遅延で接続安定性の高いコーデックが圧縮効率が高いといえます
②コーデックは音質を決める一要素
・コーデックによって音質が変わるといわれるが「音質を決める一要素」と捉えたほうが的確
・ワイヤレスイヤホンで音楽を聴く場合の音が伝わる順序は
- スマホで音楽を再生する(再生機器・ソフト)
- 音楽データが圧縮され、イヤホンに伝送される(コーデック)
- イヤホンが受信したデータをアナログ信号に復元(DAC)
- アナログ信号を増幅(アンプ)
- 増幅された信号をスピーカー部に伝える(ドライバー)
Bluetoothコーデック以外にも音質を決める要素が多いので「Bluetoothコーデックだけで音質が変わるわけではない」
Bluetoothのコーデック一覧


【今後注目すべてBluetoothコーディック】
- 上記コーディック表で黄色表示はすべて「ハイレゾ」
- aptX HD、aptX Adaptive、LDACに注目
- ギャラクシーは独自の Samsung Scalable Codecハイレゾ相当
- ファーウェイはHWA、ハイビーはUATと独自だが、コーディックで存在
- AiphoneはコーディックSBCとAACにしか対応できず、ハイレゾは無理
- Android系の各社がソニーを筆頭に、シャープ、富士通などがハイレゾ対応
- 受信側のイヤホンで装着されつつある『aptX Adaptive』が台風の目
- 送信側のスマホでは『aptX Adaptive』装備は、現在のところAndroid系の各社のハイエンドモデルのみ
- AiphoneはコーディックSBCとAACのみだから、スマホ単独ではハイレゾ対応はできない。ポタアンを併用するしかない
- LDACはスマホ側はすでに対応しているが、イヤホン側では皆無。電池の消耗と熱対策が未解決、ソニーからも完全ワイアレスイヤホンでは未発売
- Bluetoothコーディックは送信側のスマホと受信側のイヤホンが同一のもの同士しか繋がらない
aptX Adaptiveは高音質と低遅延を実現した次世代コーデック
・電波の混雑状況・データ量に応じて転送ビットレートを可変させ、接続安定性と低遅延を実現しました
・レイテンシは50〜80msとaptXと同等を維持しながら、量子化ビット数 / サンプリング周波数は24bit / 48kHz(現在は24bit / 96kHzに拡張)
・低遅延・高音質・接続安定性を実現したバランスの良いコーデックといえます
LDAC(エルダック)はソニーが開発した高音質コーデック
・遅延はあるものの、量子化ビット数 / サンプリング周波数は最大24bit / 96kHzに対応しており、いわゆるハイレゾオーディオの再生が可能
・周囲の状況に合わせて音質優先・標準・接続優先の3つのモードから選択できます
ハイレゾに該当するBluetoothコーディック・まとめ
機種は機種はハイレゾに該当するBluetoothコーディックはどれかと題して記事を書きました。昨今TWSつまり『完全ワイアレスイヤホン』の新製品発売が相次ぎ、どれを選んだらいいのか迷ってしまいます。
毎日音楽を楽しんで見える方はやはり『音質』第一で選ぶのでしょう。もちろんハイレゾ対応という魅力も外せません。イヤホンを選ぶ前提として、現在は無理としても将来的には必ずハイレゾ再生の音を聴きたい。毎日のウォーキングや散歩しながら、また通勤の途中でも音楽を聴きたい。
まず、【aptX Adaptive】というコーディックに対応した完全ワイアレスイヤホンを選んでください。機能的には『外音取込』さえついていれば『ノイキャン』はなくても大丈夫です。
その前提なら、選べる機種はたくさんあります。予算的にも5千円~2万円前後で十分です。細かい「おすすめ」は別の記事で紹介します。
それとBluetoothコーディックは送信側のスマホも同一レベルのコーディックでないと対応できません。スマホの代替え時期には必ず【aptX Adaptive】対応の機種を購入してください。